【95】やまならし

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

やまならし

やまならし


落葉高木。
雌雄異株。
高さは25mにもなる。本州、四国、朝鮮半島にも分 布する。山野の陽地を好み成長が早い。
涼しさをさそう秋の夜、風に吹かれてさらさらと鳴る葉音が嵐か雨を思わせるため「山鳴らし」、東海地方では(夜雨降り)といわれ、また京都ではこの材で扇の箱をつくったので「ハコヤナギ」、新潟では仏像を彫ったので「ホトケギ」と呼んだ。
昔は大きな木がそこここで見られたのであろうが、今では貧弱な林か単木を見る程度である。
材は淡黄白色で美しく、マッチの軸や箱などに使わ れる。
幹は通直で樹皮にそろばん玉状の裂け目が出来るの が特徴で、若い枝や葉、芽には毛を密生する。
葉は広卵形鋭頭で縁に細かい鋸歯があり、長さ5cm~10cm、葉柄は扁平で長さ3cm~7cmもあるので風にそよいで音をたてる。
葉の感じが梨の葉に似ていて実がならないので「ナランナシ」と呼んでいるところもある。