【89】もちのき

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

もちのき

もちのき


常緑高木。
雌雄異株。
山形県、宮城県から沖縄県までの沿海地と朝鮮半島 南部、中国に分布する。
高さは15mにもなる。
密に分枝してよく刈り込みに耐える。
春四月頃に前年伸びた枝の葉腋に小さく淡黄緑色の 花を束生する。
晩秋には直径1cmくらいの真紅の球形核果の結び野鳥のえさになり、赤い実と深緑色の葉にふんわりと新雪をかぶった姿は非常に風情のあるもの で、雌木の需要が多いので継木をしている庭木が多い。
 子供の頃よく小鳥を捕えるための鳥黐を作るのに檍 の樹皮をはいで外皮をのぞき水につけて腐らし、つい て砕いて水で洗うと赤褐色をしたゴム状のモチが残る。
これを竹の先につけて、鳥の来そうな所へ置いてお くのである。
竹につける時こちらの指にくっつくので 指をなめなめのばしたものだ。
材は淡緑白色で堅く、緻密均質で狂いが少なく光沢 も美しいのでろくろ細工や櫛、印材に適す。