【92】やし

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

やし

やし


熱帯一般にはえる常緑高木。高さ20~25mに達し、幹は単一で径20~30cm、基部はふくれ、頂上に20数個の大形の羽状葉がかたまってはえ四方に拡がる。
葉は帯黄緑色で、長さ4~5mになる。
核果は大形 で、三稜形をおびた卵形の長楕円体で長さ25~40cmになる。
果皮は繊維室で中に骨質の内果皮が核となり、その中に大きな一種子がある。
その周囲の固まった胚乳がコプラで脂肪に富み、 熱帯の植物資源として有数である。
中果皮は刷毛、 敷物、 縄、 靴拭に使用される。
乾燥胚乳は市販のコプラ、 脂肪は化粧料、石鹸、人造バター、 製薬に用いる. また、油粕は飼料にする。
先年南太平洋群島フィジー島へ行った時、 子供が木に登って落してくれたココヤシの実を、昔は人食い人種だったという私よりはるかに大きい、原住民の婦人がその場で穴をあけてくれて飲んだ. その胚乳は、カルピスを薄めたような味で今でも忘れられない。