【64】ぬるで

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

ぬるで

ぬるで


 落葉高木。雌雄異株。高さ5mくらいになる。
北海道から沖縄県まで、また台湾、中国、朝鮮、ヒマラヤ、東南アジアにかけて広く分布する。
葉は枝先に互生して広がる奇数羽状複葉で長さ30cmくらい、夏に新枝の先に大きな白い円錐花序を出す。秋早く紅葉し美しく、白膠木紅葉は俳句の10月の季題である。
明治の後半まで既婚の婦人のお歯黒染めは「ヌルデ」の五倍子を媒染剤として鉄漿をつけたものである。
葉に出来る虫コブ五倍子は薬用または染料に、また勝軍木と呼んで武家の旗竿に使い、真言宗では護摩木に使う。
災を払う木と古代から言われているからである。仏家の霊木でもあった。
小さな花が群生するので遠くからでも良く見える。雌花の子房に密毛がある。
果実は扁球形をした核果で紫色を帯びた黄色または橙赤色、白緑色の短毛が密に生え、なめると酸っぱくて塩からい白粉をかぶる。