【62】なつめ

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

なつめ

なつめ


落葉高木。時には10mにもなる。中国北部の原産。
日本にも古くから渡来し庭に栽培される暖帯樹。万葉集に出ていて延喜式には乾棗が献上された事が書かれている。
春に枝の先端が側芽に黄白色の花が葉腋に群生して咲きその後初夏になってようやく芽をふくのでナツメと呼ばれる。
果実は肉質2cmくらいで赤茶色に熟した実を生ず。生あるいは乾燥して食べる。平安時代から菓子として使われた。
また薬用で乾棗、または大棗と呼ばれ、日 に干したものを蒸し再び干したもので甘味があり利尿、強壮剤にする。
点茶用の茶入れの一種「なつめ」は形が棗の実に似ているところから名づけられた。
幼時近くの菓子屋にこの木があって、その家は女の子ばかりで木に登っての取り役は私の役目であった。
リンゴ似た味の甘酸っぱい味が忘れられない。材は版木、木櫛、車両に使用する。
大阪のうどんすきで有名な美々卯の玄関にも植えられていて下草のそばの花とよく合っている。