【60】なぎ

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

なぎ

なぎ

常緑高木。雌雄異株。高さ15m~20m、直径50cm~1mにもなり、主として太平洋岸に分布する。
北は紀州から四国、九州、琉球列島まで、また台湾、中国の中部以南にも分布している。
植栽すれば東京でも育つ。
ナギは紀州熊野神社の神木で海の凪にかけて漁師が信仰し、そこから又鏡の裏に敷いておけば鏡面のように波風がたたず、凪いで幸福 な家庭が持てると信じ、又葉が竹の葉と同じように20年から30本の丈夫な平行脈があり中央脈はなくその葉を引きちぎるのは相当の力がいり、紀州田辺出身のベンケイもこれには泣かされたと「ベンケイナカセ」、「センニンリキ」等の地方名があるくらいで、縁は切れないだろうとの女の人の祈りが込められてのことであろう。
樹皮は褐紫色で平滑だが老木では鱗片となって剥げ落ち剥げた跡が紅黄色となる。
花は5月に葉腋に束生し、実は球形で10月頃に1.5cmくらいの藍青色の肉質果 が熟す。
約30%の油を含んでおり、昔は神社の灯用とした。
材は皮つき丸太として床柱に、樹皮はタンニンが多く皮をなめし染料とし、樹形が良いので庭木に使われる。