【51】たぶ

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

たぶ

たぶ


常緑高木。日本の暖帯林の主要樹種である。
本州、四国、九州、沖縄、小笠原、台湾、朝鮮、中国南部に生育する。
高さ20m、直径2mにもなり、いつも青々勇壮な大木でまさに常緑濶葉樹の代表である。
地下に海水の浸入する潮入地にも適するので海岸に多く潮風にも強く防風防砂に良く病害虫にも強い。
材は有用で心材は紅褐色、辺材は淡黄褐色、巻雲紋の杢が出る。
用途は建築、家具、枕木、彫刻、器具、小舟用材、餅つき用臼、牛馬の飼料桶、まな板等に使用される。
樹皮は黄八丈絹の褐色の染料、また葉や樹皮から得たタブ粉は線香の粘結剤に使う。
先年釈迢空先生を慕う千葉、東京の方々を含めて多数紀州御坊の私の家に、南方熊楠先生と親交のあった母に逢いたいと病床に訪ねて下さった。
その時一行が南紀旅行中にこの「タブ」の木を見つけて皆大喜びだったと話し合っていた。
材は楠に似ているので「タマグス」、「イヌグス」(楠より材が悪い)などと呼ぶ。