【36】さくら

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

さくら

さくら


(桜)、落葉高木。花は美しく、日本の国花だけあって1月~12月までいろんな種類が咲いている。
昭和59年4月18日中曽根総理に招待された、新宿御苑での観桜会は“咲きも残らず、散りもせず”という満開であった。
奈良朝時代は花といえば梅、平安時代から桜に移り、紫宸殿の左近の梅もこの頃から左近の桜に変わった。
戦時中は本居宜長の「敷島の大和心を人問はば、朝日に匂ぶ山桜花」で志気を鼓舞された。
しかし、今は西行法師の「ねがはくば花のもとにて春死なむ、その如月の望月のころ」の気持も判る年頃となった。
桜は常に日本人の心に生きて来た。独特の風味の桜餅の葉はオオシマ桜の葉で一年間塩漬にした物である。
また祝事の桜湯は八重桜の花を用いる。材は版 木として最高で、宇治黄檗山万福寺の大量の版木は桜で、その中でも吉野山の桜は一番と寺僧はいう。他に家具、彫刻、楽器にも使用する。
木理は細かく光沢があり、褐色で工作し易く狂いも少い。
県木としては山形県のサクランボがある