【23】きはだ

4代目理事長の中川藤一が上梓したもので、日本の百樹木についてのエツセイです。木偏(もくへん)のものを集めています。1986年12月12日に日本経済新聞の1面、春秋にとり上げられ大きな反響を得て、経営者自身の執筆出版の先駆けとなりました。写真はウッドリーム2階に展示してあります木偏百樹。

きはだ

きはだ


落葉高木。雌雄異株。幹は直立し高さ25m、直径1mに達する。北海道、本州、四国、九州、朝鮮半島、中国北東部、ソ連アムール地方に 分布する。
材は建築材、家具、器具材に使われる。樹皮は 鮮黄色で苦く、黄檗と呼び苦味があり、健胃剤になる。黄色染料にも使われる。樹皮は黄褐色でコルク層がよく発達している。
秋には葉が黄葉する。日本名のキハダは 黄膚の意味である。
奈良県吉野産の陀羅尼助はキハダの 樹皮、黄柏を水で浸出し、その水を蒸発してつくった 乾燥エキスである。
古来健胃整腸薬として庶民の健康に役だってきたが、この葉はたいへん苦いので、その昔 僧侶が「陀羅尼」を誦する時、眠気ざましに口に含んだのがその由来だという。
キハダの樹皮をはぐのは7月中旬~8月上旬。外側のコルク層を除いて黄柏をとる。 山陰地方や北陸地方では煉熊、長野県ではお百草と いって同様のものを作っている。6月には枝先に黄色の細かい花を円錐花序につけ、10月に黒色に熟する。