橅・ブナ

樹木から木までの散歩道は広報誌「あたらしい大地」に木、樹木、木製品となどのエッセイを書くように依頼されて始めたものです。木偏百樹にある日本の樹木をより現代に合わせ、もう少し詳しい内容を入れるようにして始まりました。途中、委員会での編集方針がかわり、このコーナがなくなるまで15回連載(4年間)の読み物でした。





かつてヨーロッパでは、ブナの広大な自然林を「森の母」と呼んだ。属名のFagus は「食べる」を語源としているように食料としてよく利用された。実を豚の飼料として利用するため、放し飼いにする養豚林さえある。ブナ林で飼育された豚の脂身は旨いという。欧米のブナの枯葉はマットの中に入れる詰め物としては、なかなか圧縮されなく、7-8年は持ち、香りは緑茶に似た芳ばしい香りでワラよりも良いといわれる。ヨーロッパの林業家の言い伝えに、「ブナは夏に、オークは冬に伐るべきもの」というのがあるが、夏に伐採すれば、冬より3倍長持ちすると言われている。また科学的根拠はないが、ブナには雷がめったに落ちない。「オークは避けるべし、トウヒから逃げよ、柳には近づくな、ブナを探そう。」のことわざもある。
ゲルマン民族はブナの樹皮や板に引っかくようにして文字を書いた。英語のBookを辞書で引くと、古英語はブナの木を意味し、樹皮に字を書いたため「書物」となったとある。


北海道大学植物園のブナ

北海道大学植物園のブナ