今回は地元堺市のお話で、お付き合いください。

 髙島屋堺店が今年1月7日に閉店し、61年の歴史に幕を下ろした。

 よく通る道沿いにあり、百貨店でありながら気軽に立ち寄れる場所だった。

 そこにあるのが当たり前で、特別な意識もせずに前を通り過ぎたとき、
 見慣れた看板が下ろされていることに気づき、一抹の寂しさが胸に残った。

 髙島屋堺店は、南海高野線・堺東駅前に1964年に開業した。
 東京オリンピックが開催された年であり、大阪・京都に次ぐ関西3番目
 の店舗として、堺の新しいランドマークとして注目を集めた。

 大型ショッピングモールも、コンビニも、ネット通販もなかった時代。
 食料品から日用品、ちょっとした手土産まで、ここに来ればひと通りそ
 ろう地域に根ざした百貨店として、人が集まり、会話が生まれ、コミュ
 ニティが育まれる場所だった。

 時は流れ、欲しいものは家にいながら手に入る便利な時代になった。
 買い物のスタイルは大きく変わり、店主と会話を楽しみながら品物を選
 ぶ光景は、いつの間にか日常から遠ざかってしまった。
 それはそれで便利なのだけれど、どこか物足りなさもある。

 先日、宇宙飛行士・土井隆雄さんの講演会で、「人類は進化の過程で、個
 ではなく“群れ”として安定して存在できる社会をつくり、生き延びてき
 た」という話を聞いた。
 その言葉が、髙島屋堺店の閉店と重なって頭をよぎる。

 IT技術が進化し、人々の暮らしが“個”へと向かう今だからこそ、誰かと
 関わり、そこにある温度を感じる事が必要となる。
 便利さと温かさ、その両方をうまく取り入れたハイブリッドな生き方が、
 これからの時代、生き延びていく方法になるかもしれない。

 髙島屋堺店の跡地には、通勤・通学者や沿線住民が日常的に利用できる親し
 みのあるショッピングセンターが建設されるという。
 
 そこに生まれるであろう新しい“温度感”を楽しみに、開店の日を待ちたい。


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