昨今、テレビや新聞で「AI」に関する話題を見聞きすることが多くなりました。2016年の流行語大賞の候補にノミネートされたことはまだ記憶に新しいことと思います。
いわずもがな、AIとはいわゆる人工知能のことで、人間の持つ知的な作業をコンピュータに代替わりさせることを目的として実用・研究されている技術です。
身近な例として、インターネットの検索エンジンやスマートフォンの秘書機能に人工知能が利用されていることはよく知られています。このほかにも、炊飯器や洗濯機、エアコンなどにも人工知能は利用されています。
さて、実は人工知能の歴史の中には、今回を含めてこれまで3回のブームがありました。それぞれのブームの概略は次のとおりです。別表の「人工知能の歴史」とあわせてご覧ください。
第1次ブームはコンピュータの誕生を機に人工知能の開発を試みて起こりましたが、その困難さからブームは収束。
第2次ブームはコンピュータに様々な知識を持たせることによって、人間と同等の能力を構築するとの試みから起こりましたが、人間の持つ知識が膨大すぎて全てをデータとして書くことができずに収束。なお、脳の構造を模したニューラルネットワークという仕組みが考案されたのもこの時期です。
そしていよいよ、現在の第3次ブームが到来しました。コンピュータの性能向上に加え、ビッグデータ、クラウド、スマートフォンといった情報収集の手段が整い、それらの情報をもとに自ら学ぶことのできるディープラーニングの登場によって第3次ブームは最高潮に盛り上がっています。さらには、このままいくと2045年頃にはコンピュータが人間の知能を超えるシンギュラリティが起こると予想されています。
人工知能の歴史を振り返ってみましたが、それでは今後、人工知能が発達していけばどのような未来が訪れると考えられているのでしょうか。人工知能の利活用が望ましいとされている主な分野の医療、交通、金融、防犯、コミュニケーションから総務省の資料を基に予想してみましょう。
医療の分野では、「健康状態や病気発症の予兆の高度な診断」、交通の分野では「自動車の自動運転」や「交通渋滞の緩和」、金融の分野では「金融資産の高度な自動運用」、防犯の分野では「犯罪発生の予測」や「監視カメラの分析による防犯」、コミュニケーションの分野では「感情や意味の理解によるコミュニケーションの高度化」や「介護施設の補助」などが期待されています。
このような人工知能の活躍によって、近い将来の私たちは、健康は意識しなくても常に適正に管理され、犯罪や渋滞の無い快適な街を自動運転車によって移動し、病気のときにもロボットが看護・介護してくれるといった豊かな社会の中で生活しているかもしれません。
不思議な道具を自慢のポケットにたくさん詰め込んだ猫型ロボットや人類滅亡を目論む戦闘用アンドロイドの登場は、まだまだ遠い未来ではありますが、それよりもずっと近い未来には人とコンピュータ(人工知能)がともに手をつなぐ明るい未来があると楽しみにしています。
年代 | できごと | |
1940年代 | 最初のコンピュータができる | |
1950年代 | 鉄腕アトム連載開始 人工知能という言葉が生まれる | |
1960年代 | 第1次 人工知能ブーム 映画2001年宇宙の旅公開(人工知能HALと乗組員との闘いを描く) | |
1980年代 | 第2次 人工知能ブーム | |
1990年代 | チェスの世界王者が人工知能に敗れる | |
2010年代 | ディープラーニング開発 第3次 人工知能ブーム 囲碁のトップ棋士が人工知能に敗れる 多彩な人型ロボットの登場 |